試しにアニソンを聞いてみる。

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初めてヘッドホンアンプを買った話 その2/Audacityを使った音源のクリッピングの修復(手軽に音質改善編)

 筆者は3万円のイヤホンと5万円のヘッドフォンアンプというややアンバランス(?)な組み合わせで音楽を聞いています。アンプに関してはつい先日入手したばかりの品です。アンプを噛ませた当初はあまりの聞き心地の違いに驚嘆し我ながらいい買い物をしたものだと呑気に思っていたりしたわけですが、聞きこんでいくうちにある問題にぶち当たりました。それは、手持ちの音源の音質があまりいいとは言い難いという問題でした。

 この場合の音質というのはいわゆるmp3の云々kbpsとかの話ではなく、クリッピングの話です。クリッピングというのがどういう現象なのか順を追って説明すると、デジタル音源というのは本来録音されるべき情報の内ある一定の音量までを記録するようになっています。つまりその範囲外の音量の情報はデジタル音源になる際にロストするわけです。この情報がロストする現象をクリッピングと言います。

 これが録音時点(アナログ→デジタル変換)で生じているならしようがないなあという気持ちにもなるのですが、残念ながら実態としてはミキシングの際にレーベルが「意図的に」クリッピングを起こすことによって情報のロストを発生させているというのが現実なのです。では何故製作者はわざわざ情報の棄損を生じさせるような編集作業を行うのでしょうか?

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 とりあえず、これがクリッピングを起こしてない(と思われる)波形の例です。縦軸が音量、横軸が時間のグラフになっています。音源は吹奏楽なので、音量の小さいところと大きなところのメリハリが良くついていることが分かると思います。ポップスなどポピュラーミュージックの場合は静かな箇所でも比較的音量が高め、うるさい箇所でも他と比べてそこまで音量が大きいわけでもないというどちらかというと音量的には平坦な音源であることが多く、逆にクラシックなどの場合はうるさい箇所と静かな箇所の差がさらに激しくなり、全体としてはグラフの面積が減っていきます。

 それでは具体的にポピュラーミュージックの音源の波形がどうなっているか見ていくことにしましょう。

 

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……はい。よく「音圧を上げる」という言われ方をするのですが、見ての通り、これはその典型例で、波形をわざと潰すことで「全体の音量を取っている」(よく言えばボーカルがダイナミックに聞こえる)事がよくわかると思います。でも本当にこんなに波形を潰しちゃっても大丈夫なんでしょうか?

 

 結果的には意外と大丈夫だったりします。筆者もアンプに課金するまでは単に音量がでかいなーぐらいに思っていましたし、皆さんが手持ちのポップスやアニソンのCDを試しにPCに取り込んで適当な編集ソフトで開いてみれば、これほど酷くはないかもしれませんがこれと似たような波形が見られることと思います。(巷ではランティスはとにかく音圧を上げすぎる傾向にあるとよく言われています。ランティスのCDがあったらお試しあれ)

 しかし、気にならないなら気にならないものなのですが、一度気が付いてしまうと、とてもじゃないですが聞けたもんじゃありません。潰している分音に奥行きが感じられませんし、とにかくクリッピングノイズが音源全体を激しく覆っていて内情がよくわからような気分になるのです。あとは高音域と低音域の音の割れ……(曲中を通して音が特に大きい楽器はシンバルとバスなので、おのずとそこが割れて聞こえます)

 

 確かに190kbpsのmp3で音楽を取り込んでいた筆者にもかなりの責はあるでしょうが、クリッピングの問題で音質に異常を来しているとなると、それは完全に生産者側の責任でしょう。

 

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 そんなわけで今回登場してもらうのが「audacity」なる編集ソフトです。シンプルかつ無料で高機能なため、音楽が好きな人はそれだけでインストールしてみる価値があると思います。具体的には音楽の特定の周波数に強弱をかけるイコライジング、音源ごとにまばらである音量を均一にする正規化、ボーカル入りの音源からボーカルを消し去ってカラオケ化するボーカルレデューサー、ピッチ・テンポの変更、ノイズの除去、フェードイン・アウト、リバーブなどなど、一つ一つ紹介していくときりがありませんが、とにかくたくさんの機能がこれ一つで済ませられます。

 今回使うのはclip Fixという機能です。その名の通り、上記のようなクリッピングで失われた上下の波形を補ってくれるという地味に凄い機能です。使用するのには下準備が必要で、まずは全体の音量を下げて上下に波形を作るスペースを確保します。

 

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 筆者はエフェクトのイコライゼーションを使って全体の音量を10db下げていますが、もしかしたらもうちょっとクレバーなやり方があるのかもしれません。

 音量を下げたら、エフェクト下段からclipfixを選択します。

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 するとこんな感じのウィンドウが現れます。85.0と書かれた数値(初期値では90.0になっているかと思います)は、現在の音源の最大ボリュームがclipfix後の最大音量の何%になるかを示しています。御幣がありつつ分かりやすい言い方をすれば、数値が小さいほどclipfixで補正される情報量は増えます。ただやりすぎると、元の音源からはかけ離れた、原形をとどめない訳の分からない波形が出来上がります。

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 さて、OKボタンをクリックすると波形の形に変化が現れると思います。これが「復元後」の音声データです。試しに比べてみると、クリッピングにより失われていた上下の波形が疑似的に再現されているのが分かると思います。

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 これを最後にエフェクトから正規化(最大音量をある値に設定すること。複数の音源を扱う場面で音量を揃える目的で使います)をして作業は終わりになります。あとはファイル→オーディオの書き出しで好きな形式を選んで音楽ファイルとして出力すれば、好きなプレイヤーで再生することが出来ます。

 

 試しに出来たものを聞いてみると……ん? 地味だな……と感じられる方が多いと思います。当然ですね。もともとはデータ量を犠牲にしてまで音量を上げていたものを、データを復元するために音量を下げたわけですから、復元された部分のデータが聞けるぐらいいい環境じゃないと、「元の音源の方が迫力があっていい」ということになりかねません。(なりかねないというか、普通なると思います)

 つまりスマホと付属のイヤホンで音楽を聞いている人にとっては、音質を下げてでも音圧を取った方が迫力がある音源が出来上がるわけです。この「迫力」重視の姿勢が「音圧競争」と呼ばれる、レーベルによる音圧爆上げの音質爆下げチキンレースを引き起こしている原因なんですね。

 因みに最近はやりのハイレゾ音源ですが、一部の音源ではこの音圧競争がハイレゾ版だと緩和されている(波形を崩してまで音圧を上げていない、つまり元の波形が維持されている)ケースがあるみたいですね。やはり音質にこだわる人向けの製品ということなんでしょうか。しかしそれってわざわざハイレゾにするまでもなく、適切に波形を編集すればノーハイレゾ(?)の音源でも同じことが出来るよね、と筆者は思いますし、それを普通のダウンロード音源やCD音源で聞きたいというのが筆者の願望です。ハイレゾ版が売り出されない音楽なんてこの世にたくさんありますからね……

 

 それで結局この一連の動作で音質はよくなったのかというと、たぶんよくなってはいるはずです……(筆者の環境では、大まかに言えば音質は良くなったものの、なんだか高音がやたらと刺さる様になりました。多分clipfixの数値を下げ過ぎた影響で元の音源と関係のない音声まで復元されたことによるものと思われます)。ただ、その変化を感じられる環境があるかないか次第で聞いた印象は180度変わると思います。なんか地味だな……と感じられた方も間違った音楽の聴き方をしているというわけではなく、これは単純に志向の違いだと個人的に思います。音圧爆上げ音源でテンション爆アゲするもよし、細部にこだわるもよし、各々の環境に合わせた音楽の楽しみ方をするのがいいと思います。今回はこんなところで。