試しにアニソンを聞いてみる。

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歌手の話 ChouCho/ちょうちょ(優しさの理由、BLESS YoUr NAME、空想トライアングルなど)

・風邪のような謎の疲れとかネタ切れで随分間隔を開けてしまって申し訳ないですが、出来れば暫くはこんなペースでやりたいですね……まあ従来通り、記事ができた時に載せる感じで行きます。(軽く文章を校正しました)

 

 この人はニコニコで俗にいう歌い手をやっていたところからプロデビューした。それからはそれなりに時間が経っているけれど、今でもわりと「歌い手」と歌手の間ぐらいのキャラクターを持っていると思う。というより、寧ろそのイメージを大切にしているのかなと思う。音程やリズムというわかりやすい部分に丁寧さがあって歌の線がやや細い。その2つは深いところで共通しているし、具体的には若い女の子がやる感じでファルセットを使うのが一番わかりやすい部分だ。一言で言えば、緩急をつけることが要求されるCDのポップス音楽の世界に於いて彼女の歌には特徴的な平たさがあるし、そこが魅力的でもある。

 平たい歌の要件というのば僕が知るかぎりでは2つある。一つはアクセントやリズムからポップス的なノリを歌の中に作ろうとしないことと、もう一つはミックスボイスの音域を多用してふわふわとした歌に仕上げることだ。普遍的にその法則が100%当てはまるとも言い切れないが、少なくともChouchoには、歌にある種の透明感のようなものを与える特徴として両者がとてもよくあてはまる。リズムとアクセントに関して昔書いた事を改めて説明すると、1,3拍が重い(そこにアクセントがあったり2,4拍が若干遅れたりすることで四拍子の曲の1,3拍に音楽的な比重が乗るような傾向が、ほとんどの歌手の楽曲には曲の構成からも歌われ方からも出る)とか、アクセントを強調する為にいわゆるしゃくらせる状態を作ったりとか、そういう音楽をポップにする要素の話だ。Chouchoは特に最近は意図的にそういう要素を歌から取り除き、非常に譜面通りに美しさのある歌を歌っている。

 

・優しさの理由


[Official Video] ChouCho - Yasashisano Riyuu - 優しさの理由

 

 優しさの理由にはサビに指摘を受ければ誰にでも分かるような特徴的な箇所がある。

 

 ひーかりーもーかーげーもーまーだーとーおーくーてー

 ◯ △ ◯ △ ◯ △ ◯ △ ◯ △ ◯ △ ◯

 

 この曲は四拍子なので1,2,3,4のリズムの繰り返しで歌が構成されている。指揮者(そんなものはいないが)は4つの繰り返しでリズムを刻み続ける。上の歌詞の絵合わせみたいなので言えば丸が1拍目(拍の頭)で、三角が3拍目なんだが、その2つをまとめて「強拍」等と呼ぶ。本来歌は◯の上が一番強く△の上が2番めに強い。この歌の伸ばすような独特の感じは、前に話した綾野ましろのvanilla skyやKOTOKOのbeingみたいに、弱拍になる部分に歌詞が来ているのでそこを強く歌わざるをえないという、我々が普段無意識的に前提にしている部分がちょっと崩れているところから来ている。因みに歌詞がなくても伸ばし棒があれば本来その上にアクセントを載せることもできる。上で言えば「ひーかりいもおかあげえもおまあだあとおおおくうてえ」等と(ちょっと滑稽だが)歌えば伸ばし棒上に自然にアクセントが来るが、なんというかそれをすると歌が仰々しい感じになるのもわかると思う。まあしかしさり気なくやれば別におかしいことはないし、こういうふうに歌う歌手は一杯いる。つまるところこの歌は、わざわざシンコペーション(強拍のズレ)を聞き手に感じさせるような作りと歌唱になっているのだ。

 

 歌唱的には若いエネルギッシュさを感じさせる上にとても丁寧にまとまっている。非常に完成度が高いが、車で言うところのエンジン自体の扱いの良さというか、少し細さを感じさせる分丁寧にまとめてあるような感じもあると思う。

 


・BLESS YoUr NAME


ChouCho - BLESS YoUr NAME [Official Video]

 

 この曲は歌唱的にとてもシンプルだ。piece of youthの方が分かりやすくシンプルだが、速さとか曲調が似ていると思うのでこちらを選んだ。似ているのはこの楽曲もシンコペーションが曲全体にわたって多い。試しに同じことをしてみる。

 

 こんなぜっつっぼーのーなーかー えーらびーとーるーのはー

 ◯ △ ◯ △ ◯ △ ◯ △ ◯ △ ◯ △ ◯ △

 

 さっき程極端ではないがこれも非常にシンコペーションが多いし、リズム的には十分難しい楽曲だ。たださっきよりもわかりやすいことがあるとすると、伸ばし棒じゃなくて「小さなつ」がある場所は伸ばし棒のようにリズムを移動するのか維持するのか選ばされるのではなく、問答無用でアクセントが前の発音に移動するため、聞いている方も伸ばし棒よりは混乱しづらい。そういう「小さなつ」から裏拍(上で言う◯も△も無いところ)に入って延々と裏拍で歌い続けるため、「入り際の違和感」を聞いている方は覚えづらいためすんなり聞けると思う。

 どうでもいい話としては、◯△上に歌詞のアクセントがある曲は人は4分間隔で漠然と感じられるが、この二曲のように4分音符の間に歌詞があるものは聞き手が強制的に8分音符間隔で刻みながら聞かさせられる。彼女の歌は非常にシンコペーションが多く、またアクセントが激しい歌手がシンコペーションをやり続けると難解になりやすいから敬遠されやすいという風に言えば、彼女がそういう曲をやっても大丈夫なのは納得しやすいところではあると思うし、彼女の綺麗な歌という美点を活かした楽曲作りがなされていると思う。

 

 つけくわえるなら、サビ後半の

そーのーむーねーのーおーくーとーどーくまーでー 

◯ △ ◯ △ ◯ △ ◯ △ ◯ △ ◯ △

 

 とかで歌詞が表に戻ってくることで聞き手に安心を与えているあたりも、明快な作りの中でリズムを特徴づけているポイントだと思うし、インスト的には同じ箇所でドラムが4つ打ちを初めているのも、リズムが戻ってきますよという合図だと思う。


 面白いのは、上の優しさの理由とかカワルミライとか昔の歌を聞くともっと歌手としての表情がわかりやすかったというところだ。とはいってももともと個性的な歌い方というのが少ない歌手ではあるが、ポップスらしい歌い方が抜けてより平たく歌が歌われるようになっているしそこで歌手としての出来も陰りを見せていない。それが彼女に求められているものなんだろうという感じもするが、こういう変化を辿る歌手は少ないというより他にあまりいない。普通ポップスの歌手は(当たり前みたいな話だが)こなれるほどにポップスらしい個性が出てくるものだし、アクセントがシンプルで大胆になっていくことで加齢とか慣れによってパワフルさが失われて行く分は歌として磨かれていく。Liaみたいに技術的に成熟する程アクセントを強烈にする方に走って音楽的に成功をおさめる(そう僕には見える)歌手もいるが、まあ何にせよアクセントというのは激しくなって強調されようがシンプルになって強調されようが、とりあえず分かりやすくなって歌がはっきりとしてくるのが普通だ(殆どの場合アクセントは歌手歴が長いほどシンプルになっていくし、まあその長い目で見たキャラクターの変化に伴って売上も変わってしまったりすることもよくある)。ChouChoの歌はそういった点で非常に珍しいと言える。

 ミックスを常用するところから来るふんわり、しっとりとした聞き心地も含めて、女子校生みたいな部分もあるとは思うが、よく言えば難しい歌も美しい歌に出来る歌手だ。現にここで上げたような二曲は、既存の卓越した技術をもった歌手が歌うと聞いている方はシンコペーションが多すぎてわけが分からなくなると思う。CDとしてまとめられるためにプロに発掘されてくるような歌手は皆リズム的に平易な歌をダイナミックに歌える歌手ばかりだから、これは歌い手から歌手への道に辿り着いたちょうちょの何よりも特徴的な歌なのだ。

 

※※※                                            ※※※

 


ChouCho TVアニメ『ハルチカ~ハルタとチカは青春する~』ED主題歌「空想トライアングル」Music Clip Short Ver.

 

 2/24に発売される空想トライアングルはインストとボーカルのいいところを合わせてきたような、いい意味で凄くなんというかボカロ音楽的で魅力的な楽曲に仕上がっている。これを聞けば彼女に対する評価は120度ぐらいは変わる可能性があるし、寧ろこういうちょっとオシャレで複雑なものをさり気なく歌うからChouChoなのだという感じが僕はするし、これを聞く限り彼女は歌手としての表現というレベルでもちゃんとうまくなっているじゃないかと思う。軽快な中に、上記で言ったようなポップスらしく整った人間味が感じられる部分があるからだ。今後いくらでも活かされる余地を持った、ニコニコ的な意味に限らず歌を歌うすべての人的な意味で、素晴らしい歌い手だと思う。

 

 他の記事。

歌手の話 KOTOKO(being、七転八起☆至上主義!、TOUGH INTENTIONなど) - 試しにアニソンを聞いてみる。(綾野ましろ→ここ→KOTOKOにしました)

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